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滅びの前のシャングリラ 凪良 ゆう [作家な行]


滅びの前のシャングリラ (単行本)

滅びの前のシャングリラ (単行本)

  • 作者: 凪良 ゆう
  • 出版社/メーカー: 中央公論新社
  • 発売日: 2020/10/07
  • メディア: 単行本



以前読んだ「流浪の月」(本屋大賞受賞作)で、
凪良ゆうさんを知り、今回の作品が2冊目になります。


「1か月後、地球に隕石が落ちて人類が滅亡する。」

抗えない現実を前に、
人は何を思い、どう行動する。


いじめられっ子の友樹。
持ち前の脳内思考変換で、
辛い事を日々乗り越えてきた。

でも、憧れの雪絵に冷たくされたときは、
「人類を滅亡させてください」なんて考えたりした。
まさか現実になるとは思いもしなかった。


後1か月しか生きられない。

突然の告知で、社会はパニックになった。

人は理性や秩序を失い、暴徒化し、
街は荒れていく。

無法地帯となり、生き抜くだけでも大変な世の中。

でも今、友樹は、あの雪絵と一緒にいる。

雪絵を守りぬくという使命感で高揚している。


ろくでもない暴力男の信士。

物凄く強くてたくましくて優しい母の静香。


危険と隣り合わせの中、
この4人が合流し、一つ屋根の元で過ごす事に。

それぞれの思いを胸に、
精一杯生き抜く。

そんな中、歌姫のLocoが最後のコンサートを開催するという。

雪絵がファンだというLocoにも、
濃厚な過去があって・・。

昔の仲間とのライブ。
本当の自分に戻れた気がした。

盛り上がる雪絵や友樹、
集まってくれたファンやそうじゃない人も、
皆と一緒に・・・・・。





この世の終わりを前に、
ストレートな表現が印象的で迫力があります。

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流浪の月 凪良ゆう [作家な行]


流浪の月

流浪の月

  • 作者: 凪良 ゆう
  • 出版社/メーカー: 東京創元社
  • 発売日: 2019/08/29
  • メディア: 単行本



2020年の本屋大賞受賞作です。
愛という言葉では言い表せない絆、
切実な気持ちが、
痛いくらい伝わってくる作品です。


普通ではないとレッテルを貼られると
真実も真実と認められないまま
時に押し流されていく

小児誘拐の犯罪者として晒された文。

文は、何も悪い事はしていない。
9歳だった私を救ってくれたのは文だった。

世間が流し、拡散するゴシップは、
容赦なく真実の仮面を被り続ける

誰も私の言うことを信じてくれない

憐みの目、好奇の目

大人になって出会った男性にも
打算的なフィルター越しで見られた上、
酷い事をされた。


優しかった文。

再会をした時、唯一生きている価値を覚えた

しかし、無情にも
過去はいつまでも私たちにまとわり続ける

被害者と加害者。
その奥にある真実には、目を向けず
偽りの話を勝手に信じ、
異様なものを見るかのように、
嘲り、批判し、罵り続ける。

違うというだけで
生きにくい世の中

数少ない理解者

私と文は、
お互いの存在を尊重し、
歩み続ける








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宿命と真実の炎 貫井徳郎 [作家な行]


宿命と真実の炎

宿命と真実の炎

  • 作者: 貫井 徳郎
  • 出版社: 幻冬舎
  • 発売日: 2017/05/11
  • メディア: 単行本



「後悔と真実の色」の続編。


最も、悪なのは、誰なのか。


昔同じ所轄に勤務していた警察官の相次ぐ死。
事故死、他殺、自殺
絶妙に欺くやり口で、全ては繋がっていた。
しかし、警察は真実から目をそらされていた。

事件の真相を探る所轄刑事の理那。
かつて辣腕刑事だった西條の推理。

新たな冤罪を生まないために、再調査に入る。

以前、警察の隠蔽により、冤罪の罪を着せられた男。
その環境から起きた子どもたちの心の闇。


憎むべきは、絶対的権力を持つ警察。

復讐でしか果たせなかった憎しみ、やるせなさ。


罪を認め、変革させるべきなのは、警察も同じ。

権力の在り方は、明るみにはならず、すべて隠蔽。




モヤモヤが残る小説でした。。

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i(アイ) 西加奈子 [作家な行]


i(アイ)

i(アイ)

  • 作者: 西 加奈子
  • 出版社: ポプラ社
  • 発売日: 2016/11/30
  • メディア: 単行本



生きることの摂理
人種、国、精神。
うまく生きようとするあまり、
本当の心がわからなくなる。

死に対して執着する。

生を認めたい心の叫び



「この世界にはi(アイ)は存在しません」

高校の数学教師が言った、虚数単位であるi(アイ)は
「存在しない数」

アメリカ人の父・ダニエルと日本人の母・綾子。
アイはシリアからの養子だった。

子供の頃から、物事を深く考え、
傷つくことを恐れ、目立つことを恐れ、
常に周りを気にして、生きてきた。

世界で起こる様々な悲惨な事件、事故、災害。
多数の死者の数をずっとノートに書き記していた。

なぜ、この人たちだったのだろう。

シリアでの死者。
養子に選ばれなかったら、
私が死んでいたのかもしれない。

「世界にアイは存在しません」

いつも、この言葉は呪文のように
アイを苦しめた。

自分の存在価値を見いだせず、
月日は流れていく。


「アイは存在します」

唯一の親友であるミナ。

ユウとの出会い。


ユウとの生まれてくるはずだった子ども。

絶望。


「世界にアイは・・・」

カラカラに乾いた。
涙も枯れ果てた。

それでも、自分は生きている。

私は心を取り戻せる。


自分が見えた。
自分を認めた。
どんな事があっても、
ずっと、私はここにある。


「この世界にアイは存在する。」



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壁の男 貫井徳郎 [作家な行]


壁の男

壁の男

  • 作者: 貫井 徳郎
  • 出版社: 文藝春秋
  • 発売日: 2016/10/28
  • メディア: 単行本



小さな町の家々の壁に描かれた絵。
一見、稚拙な絵だが、人を引き付け、
見る者の心を掴む。

この町の噂を聞きつけ、
観光客が来るようにもなった。

ジャーナリストである私は記事にしようと、
この男に取材を試みるが、
男は頑なに拒み続けた。

私は、この男の事を知りたくなった。

この町で塾講師をしているこの男、伊刈。
母は、かつて美術教師だった。

決して上手いとは言えない絵。
なぜ、皆、魅入られるのか。

伊刈の生きてきた道を知るうちに、
衝撃を受けると共に、
悲痛な思いが押し寄せる。

少年時代、学生時代、そして社会人生活。

関わってきた人たち。

忘れられない思い出。

無念さ。


すべての思いが、

今の伊刈の絵となり、心となる。


一言では表せない人生が、

ここにある。





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