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木挽町のあだ討ち 永井紗耶子 [作家な行]


木挽町のあだ討ち

木挽町のあだ討ち

  • 作者: 永井 紗耶子
  • 出版社/メーカー: 新潮社
  • 発売日: 2023/01/18
  • メディア: 単行本



第169回(2023年上半期)直木賞受賞
第36回(2023年)山本周五郎賞受賞


睦月晦日の丑の刻、
木挽町芝居小屋裏手にて仇討ちあり。

仇討ちを成し遂げたは、菊之助。
父の仇である作兵衛の首級を上げ、
野次馬をかき分け立ち去りし末は、
仇討ちを認められ、母の待つ里に帰還を遂げた。


その後、菊之助の縁者を名乗る若侍が、
仇討ちの舞台となった木挽町を訪ね、
関りのあった人々に話を聞いて回っていた。

木戸芸者の一八、立師の与三郎、
衣裳部屋のほたる、小道具の久蔵夫婦、
そして芝居の筋書を書く金治。

それぞれの身の上話も聞いていく。

多様な苦難から流れ着いたこの芝居小屋、
菊之助の身の上を、人情溢れる面々が見守る。。

徐々に明かされる真実、
仇討ちの背景、
菊之助の苦悩・・・。



すとんと合点がいく結末に、
文章の構成の素晴らしさもあり、
とても面白い作品でした(^▽^)









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ミシンと金魚 永井みみ [作家な行]


ミシンと金魚

ミシンと金魚

  • 作者: 永井 みみ
  • 出版社/メーカー: 集英社
  • 発売日: 2022/02/04
  • メディア: 単行本



第45回すばる文学賞受賞作

誰もが老いていく。

遠い思い出。

鮮明に蘇る記憶。

しかし、最近の出来事や、
直前の事は、きれいに忘れている。

大きなみっちゃん、小さいみっちゃん、
ヘルパーさんみんな、みっちゃんと呼び、
デイサービスや病院に行く。

息子の嫁が訪ねてくる。
「健一郎はこないの?」
息子の健一郎が2年前に亡くなったのも覚えていない。


長い人生、たくさん辛い事があった。

ミシンを使い下着の縫製を生業とし、
常にミシンと向き合う毎日だった。

私には娘もいた。

道子というかわいい子だった。

しかし、幼いまま亡くなった。

みっちゃん・・・。

笑顔を思い浮かべる。

ずっと心の奥に・・。



「しあわせだったか?」と聞かれたら、
つべこべ言わず、
「しあわせでした」と答えてやろう。


目の前に現れたきれいな花を前に、

抗うことなく、

導かれるままに・・・。






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紙の梟 ハーシュソサエティ 貫井徳郎 [作家な行]


紙の梟 ハーシュソサエティ

紙の梟 ハーシュソサエティ

  • 作者: 貫井 徳郎
  • 出版社/メーカー: 文藝春秋
  • 発売日: 2022/07/13
  • メディア: 単行本




「人、ひとりを殺したら、死刑になる」

この法律が制定された世の中、
人々の考え方が変容した。

〈殺さなければ、半殺しにしてもいい。
目を潰し、舌を切り、手足の指を切り・・〉

〈友達を守るために、咄嗟に殴って殺してしまった。
殺意はなかったにせよ、ひとり殺してしまった事実。
そうか、もう何人殺そうが関係ないんだ・・〉

〈いじめを苦に自殺した中学生。
加害者の情報がネットに出回る。
その加害者を殺す。
自分で命を絶つ勇気がない者が選んだ道。〉


ネットの流れは死刑容認派が多く、
反対する者は、徹底的に叩かれた。



突然、俺の恋人が殺された。

後に発覚した彼女の事実は、衝撃的なものだった。
名前を何度も偽り、男から金を巻き上げる・・

俺に対してもそうだったのだろうか・・。

彼女の真実を知るため、過去を探り始める。

辿り着いた場所で、見たものは・・



彼女を殺した犯人は、
金を巻き上げられた父親の息子だった。

俺は、生きて罪を償って欲しいと心から思った。






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夜が明ける 西加奈子 [作家な行]


夜が明ける

夜が明ける

  • 作者: 西加奈子
  • 出版社/メーカー: 新潮社
  • 発売日: 2021/10/20
  • メディア: 単行本




「長い夜が明けた」
この本を読み終えた時の一声。


高校時代に出会った俺とアキ。

無駄にデカく、風貌は醜く・・
そんなアキが、「男たちの朝」に出てくる
マケライネンに似ている事で、
俺はアキに興味を持った。

「男たちの朝」を観たアキは、
マケライネンを真似するようになり、
人気者になった。

高校卒業後は、
俺はテレビ局の下っ端、
アキは劇団の見習いとして、
別の道に進んだ。

俺は、目まぐるしく働いた。
体はボロボロなうえ、
理不尽さ、パワハラ、セクハラ、諸々、
限界になるまで耐えた。

一方、アキも、ままならぬ人生を送っていた。
根底にあるマケライネンを支えに、
懸命に生きていた。

俺は倒れた。
職は無くなった。

立ち直れない程の精神状態の俺に、
後輩だった森が言った言葉。

俺の心に響いた。

素直になって「助けて」と人を頼る事・・

その時、
俺の元に届いたアキが書き綴ったノート。

差出人はかつてマケライネンと住んでいたという
老人だった。

アキはマケライネンが生きたフィンランドに行っていた。

そこで、亡くなっていた。

アキは、俺に感謝している。
俺のおかげで、人生を歩む事が出来たと
初めて知った。

俺は、この時決意する。

アキの生きた軌跡、
そして世の中の理不尽さを
描き出すことを。








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悪の芽 貫井徳郎 [作家な行]


悪の芽

悪の芽

  • 作者: 貫井 徳郎
  • 出版社/メーカー: KADOKAWA
  • 発売日: 2021/02/26
  • メディア: 単行本



人間は、動物から進化を遂げ、社会を作った。

そしていつしか、
強者と、弱者の差が生まれ、
極端な格差社会となった。

傲慢さ、蔑み、妬み、憤り・・

様々な感情が、蔓延る現代、
匿名という保護の元、
簡単に晒される言葉は、
時には、人を残酷なまでに打ちのめす。



最大級のアニコン会場で、
男が火炎瓶を投げ込み、
大量の死傷者を出した。

男は、その後焼身自殺をした。


事件を起こした男・斉木は、
安達の小学校時代の同級生だった。

斉木は苛められていた。
その原因を作ったのが、安達だった。


就職氷河期に晴れて銀行員になった安達と、
アルバイト生活をしていた斉木。

事件の発端は、小学時代のいじめとの報道で、
安達は、そのことを確かめようと、
斉木について調べ始める。

自責の念から解放されたい思いから
斉木を理解しようと試みるが、
自らの傲慢さを思い知り、苦しむ事に。


斉木は、安達が思うより、
人間らしい心を持っていた。


人類は、まだ進化途上であり、
全ての人間が成長するにはまだ時間がかかる。


斉木は、
今の世界に絶望し、
人間に絶望し、
自分自身に絶望したのだ。



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