君のクイズ 小川哲 [作家あ行]
2023年本屋大賞ノミネート作品です。
「Q-1グランプリ」
クイズ王を決めるこの大会の
ファイナリストである僕。
隣には、人智を超えた暗記力を持つ本庄絆がいる。
6-6で迎えた最終問題。
本庄絆が回答し、正解した。
しかしそれは・・
問題が読まれる前だった・・。
なぜ、彼は正解できたのか。
やらせだったのか、それとも・・
僕は、本庄絆が出場した過去の映像を見返し、
そのヒントを探る。
クイズを極める者しかわからない境地。
全ての出来事が経験値として蓄積し、
そして生かされる
日々、鍛錬を重ね続ける
正解を獲得した時、
自らを肯定されるような充足感は、
何にも代えがたい
しかし世の中には色々なプレイヤーがいる
僕は、本庄絆に話を聞くことにした・・・
月の立つ林で 青山美智子 [作家あ行]
それぞれの人生。
何事もうまくいかない、
思い通りにいかない、
誰もが、思い悩む。
そんなに日常に、
そっと安らぎを与えてくれたのは、
ポットキャストから流れる
『ツキない話』だった。
「竹林からお送りしております、
タケトリ・オキナです。
かぐや姫は元気かな」
お決まりのフレーズから始まる
月に纏わる興味深い話。
優しく静かで、どこかさみしくて、
なのにあたたかくて、親しみやすい声。
心を引き留め、月に思いを馳せる10分間。
職場環境に悩んだ元看護士、売れない芸人、
娘が結婚し寂しい二輪自動車整備士、
自立資金を貯める為、二輪車でバイトをする女子高生、
仕事と家庭の変化に悩むアクセサリー作家
そして原点にある「劇団ホルス」
タケトリ・オキナが導く人と人の繋がりは
巡り巡って、自分を照らす輝きとなって現れる・・
月の姿が見えない新月、
事の始まりの日。
旧暦では月の始まり。
月の立つ日、ついたち・・
新たな一歩が始まる
青山さんの小説は、
とても優しくて温かい。
全く違うそれぞれの日常が、
いつの間にか一つの大きな流れとなって
循環していく様がとても美しいと思う。
何冊か拝読していますが、
共通して感じる事です。
花ざかりを待たず 乾ルカ [作家あ行]
読み終えて、
号泣してしまいました( ;∀;)
余命1年と宣告された利夫。
残された時間を有意義に過ごしてもらおうと、
妻の慶子、娘の由希子、真理子は旅行を考えるも、
急速に病状は悪化し、叶う状態ではなくなっていた。
余命半年、更には余命2,3か月、
そして、2週間・・と変化していった。
椎名家は、次女の真理子は結婚し、子どももいる。
一方、長女・由希子は、実家暮らしの40歳。
両親共に、娘の結婚を願い、
由希子の様子を伺っていた。
由希子は、独特な世界観を持っていた。
文章を書くのが好きで、
一度、小説で賞をとった。
しかし、その後は意欲を無くしていた。
異世界へ身を委ね、空想の世界を行き来する
由希子は
〈人を好きになったことがない〉
結婚を急かす慶子は、
余りの衝撃で、思わず出た言葉を、後悔する。
「異常だわよ
由希子、可哀想に」
しかし、幸せとは、
結婚することではないのかもしれない・・
急激な状況の変化が、
由希子に再び書く力を与え、
痛みに苦しむ利夫の横で、
パソコンを打つ。
利夫はわかっていた。
由希子は今、幸せなのだと。
利夫は、インフォームドコンセントを受けてから
36日後に亡くなった。
家族の在り方、
個人の在り方は多様。
何が、幸せなのかは、
本人にしかわからない。
六人の嘘つきな大学生 浅倉秋成 [作家あ行]
2022年本屋大賞ノミネート作品。
就活中の大学生。
IT企業の最終選考に残った6人。
1か月後、チーム力を発揮し、
最高なディスカッションをするはずだった。
6人全員、合格の可能性があるとの事で、
最高のチームとなり、
全力を尽くそうと皆思っていた。
しかし、試験前日に企業からのメールで、
内定者は、1人。
しかも、ディスカッション中に、
自分たちでふさわしいと思う人を選べという。
戸惑いながらの試験当日。
会場内に、そっと置かれた袋。
そこには、6人宛の封筒が入っていた。
それぞれの封筒には、
6人の「罪」「過ち」が書かれた告発文、
証拠となる写真が入っていた。
自分の内容は、他の誰かが持っている・・
誰が、こんな事を・・。
心の探り合いが始まる。
裏の顔が、次々と暴かれていく中、
誰もが疑心暗鬼になりながらも、
刻々と時間は流れる・・・
内定者にふさわしいと思う1票を、
投じなければならない。
「月の裏側は、見えない」
見る角度によって見え方が違う。
表面だけでは、良し悪しは判断できない。
悪い側面を鵜呑みにせず、
全ての面に目を向けなければ、
真実は見えてこない。
後にわかった真実を前に、
この企業に唯一就職した自分は、
人として大切な事がわかった気がした。
マイクロスパイ・アンサンブル 伊坂幸太郎 [作家あ行]
これまた摩訶不思議な物語。
マイクロサイズの諜報部員が行き交う世界と、
普通の社会人の日常が、
猪苗代湖を舞台に交錯する。
暴力をふるう父親と
いじめてくる周りの奴らから逃げ、
諜報員になった少年。
エージェント・ハルトと行動を共に、
任務遂行のために活動する。
命の危険が伴う任務で、
何度か敵の攻撃により絶体絶命のピンチに陥るも、
絶妙なタイミングで、
大きな壁が立ちはだかり、
難を逃れる事態を体験する。
一方、
社会人1年の松嶋の日常は失恋から始まり、
2年、3年と、色々な経験を積みながら
経過していく。
実家の福島にある猪苗代湖。
この地を様々な人と、何度も訪れ、
人生の岐路ともいうべき話や体験をする。
ふとした出来事が、
人生を左右する・・・
相互に作用する事象・・。
ある時、突然現れた扉から2人の男が・・。
偶然、揃った!!
喜ばしい奇跡が起きた瞬間?!
この地が導く、不思議な物語。