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旅する通り雨 沢村 凛 [作家さ行]


旅する通り雨 (角川文庫)

旅する通り雨 (角川文庫)

  • 作者: 沢村凜
  • 出版社/メーカー: KADOKAWA
  • 発売日: 2023/02/24
  • メディア: 文庫




「通り雨は〈世界〉をまたいで旅をする」を改題出版。

当時、
同時に出版された「ぼくは〈眠りの町〉から旅に出た」は、
2014年に読みました。

片やファンタジー、
今回の作品はSFという、
異なるジャンルではありますが、
どちらも謎が多く、空想が膨らむ作りになっています。

現実からかけ離れた点は同じですが、
こちらは、理論的で
少しだけ地に足が着いている感があります。


多くの謎が、様々な人物の思うままに語られ、
後に真実が明らかになる・・。


「雨がくると、覚悟をしなければならない。
家族がひとり、へることを」

子どものハランが聞いた不吉な噂・・

その後、雨降る中、現れた一人の旅人。

彼は、住み込みで仕事を手伝うようになる。

祖父、父、母、兄、姉とぼく。

それぞれの胸の内は複雑だ。


大人だけの秘密。

18歳になると実行できる事とは・・・


社会の発展、進化に伴い、
おこる弊害。

生きやすい世界を追求し、
自分の居場所を見つける。

しかし犠牲にする対償は大きい。

愛する人との別れ・・。


矛盾、非合理性。

生きていく適合性。

叶わなかった思い。


胸に残したまま、この地で生きる。


大事な言葉を伝えるために舞う。


伝道師は
大切な役目を担う。






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弧蝶の城 桜木紫乃 [作家さ行]


孤蝶の城

孤蝶の城

  • 作者: 桜木 紫乃
  • 出版社/メーカー: 新潮社
  • 発売日: 2022/05/18
  • メディア: 単行本



唯一無二の存在となる。

カーニバル真子としての人生を生き抜く。

男・秀夫として生まれ、
心とのギャップにもがき苦しみ、
やがて故郷を出た先で、
女として生きる事を徹底していく。

世間に注目され続け、
話題性に事欠かないよう、
常に前進し続けた。

女性になるための最後の仕上げ。

モロッコに渡り手術を受ける。

その術後の経過が思わしくなく、
生死の境を彷徨う日々が続くも
ある医師に助けられ、
カーニバル真子の人生は続いていく。

しかし、体が腐敗していくような壮絶な日々の記憶は、
秀夫の心の奥深くに傷となって刻まれた。


それでも、帰国したカーニバル真子の躍進は続いていく。

移り行く世間の波に、上手く乗るために、
色々な事をした。

大勢の通り過ぎる人々を前に、
母と姉、昔から秀夫を知る者たちは
いつでも秀夫の味方だった。

ある時、裏切り、屈辱の中に見たものは、
胸の奥に沈んでいた記憶からの道だった。

その先には行ってはいけない恐怖。

闇から這い出るために・・


信じられる人たちに
囲まれた幸福を噛みしめる。

光が見えた先には、
再び目標に向かう
カーニバル真子の姿があった。








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掬えば手には 瀬尾まいこ [作家さ行]


掬えば手には

掬えば手には

  • 作者: 瀬尾 まいこ
  • 出版社/メーカー: 講談社
  • 発売日: 2022/07/06
  • メディア: 単行本



2019年本屋大賞「そして、バトンは渡された」の
著者である瀬尾さんが描く
日常のある風景。


平凡な人生が悩みだと匠は思っていた。

しかし、人の考えている事がわかる能力が
自分にあるのでは?と信じ、
実際、級友のピンチを何度か救ってきた。

大学生になり、
バイト先である飲食店の店長が性悪で、
次々とバイトが辞めていく中、
匠は最長記録を更新し続けている。

後に入った常盤さんも、辞めずに続いている。

常盤さんは、寡黙な女性で
なかなか心を開いてくれない。

ある時、匠は店長の誕生会と称し、
常盤さんの話を聞こうと、
3人で食事をすることになった。

相変わらずの常盤さんだったが、
ある時、彼女から、
違う女性の声が聞こえた。

匠はその声と心で会話するようになる。

その声に名前まで付けて・・

常盤さんに纏わる悲しく切ない過去。


全てが解放された後、
新たな一歩踏み出す。

それぞれの夢に向かって。





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隠居すごろく 西條奈加 [作家さ行]


隠居すごろく (角川文庫)

隠居すごろく (角川文庫)

  • 作者: 西條 奈加
  • 出版社/メーカー: KADOKAWA
  • 発売日: 2022/02/22
  • メディア: 文庫



2021年「心淋し川」で
直木賞を受賞した西條奈加さんの作品。


隠居により、立場や環境の変化から、
今まで歩んできた人生とは全く違う考え方を、
小さな孫が運んできた難題に挑む度に思い知らされる。

堅実に厳しく商い業を営んできた自身を顧みる。
徐々に考え方が変化していく。

商い以外での人と人の繋がりが
いかに大切かを知る。


糸問屋・嶋屋の主人徳兵衛は、
三十三年間の仕事一筋の生活に終止符を打ち、
還暦を機に隠居することにした。

しかし、孫の千代太が住処に通い始め、
静かな暮らしは一変する。

心の優しい千代太は、
捨て犬をはじめ、色々持ち込んでくる。

「人のためにその優しさを使ってみてはどうだ」

徳兵衛のその一言から、
様々な事が始まった。


人生の2枚目のすごろく。

真白な紙っぺらが、
孫の千代太が賽を振り、
道を示し、手を引き、
いつの間にか、考えもしなかった道を進んできた。

「上がり」はなく、
この先も築いた道は継がれていく。



人情味あふれる時代小説で、
とても面白かったです。

時に落ちる徳兵衛の雷が、
実に爽快で、すっとします。

でも、孫にはタジタジで、
どうにかしてやりたいという気持ちが伝わり、
それが、頑なだった心を解かし、
結果、自分も周りも愉快になっていく。






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心淋し川 西條奈加 [作家さ行]


心淋し川

心淋し川

  • 作者: 西條 奈加
  • 出版社/メーカー: 集英社
  • 発売日: 2020/09/04
  • メディア: 単行本



第164回直木賞受賞作。

まったりと淀む心川が通る心町(うらまち)。

この小さな川の両脇の立ち腐れた長屋に
集まる住人たち。

差配として茂十は、
人々の生活を見守っていた。

辿り着いたこの地で、
住人たちは、
貧しいながらも、懸命に生きる。

様々な人間模様を、
茂十は見てきた。

ささやかな喜び、
深い哀しみ・・


「何があったかきかぬのが、
心町の理(ことわり)」

「生き直すには、悪くない地」

茂十もまた
この地の住人なのである。









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