小野寺の弟・小野寺の姉 西田征史 [作家な行]
2014年に映画にもなった作品。
姉に片桐はいりさん、弟に向井理さん。
映画は見ていないのですが、
お二人の様子を思い浮かべながら、
読み進めていくと、より楽しいです。
ピッタリの役だと思います。
姉・より子、弟・進、二人暮らし。
しっかり者のより子と、少しシャイな進。
言いたいことを言い合い、
時にはぶつかり合うこともあるけれど、
お互いを心の底では、思いやり、
良い温度で暮らしている。
何かと一歩を踏み出せない進に、
何とかしてやりたいより子なのだが、
そううまくは行かず。
進は、昔いたずらが過ぎて、
姉の前歯が折れたことで、
それが、姉の人生に影響を及ぼしていると思い、
ずっと責任を感じていた。
進なりの姉への贈り物。。。とは
お互いに、お互いの幸せを思う。
心の声が、ユニークで、
ホッコリあたたかい。
まく子 西 加奈子 [作家な行]
「サラバ!」で、直木賞を受賞した西加奈子さん。
受賞後の作品です。
小さな温泉街。
小学5年生のぼくは、子どもから大人への、
微妙な時期だった。
周りの変化や、心の葛藤、
何もかもが中途半端で、もどかしかった。
突然村にやってきた母と子。
転校してきたコズエは、
とても美しく、不思議な雰囲気を持っていた。
純粋で真っ直ぐな目は、皆を引き付けた。
学校帰りに寄る城跡に、
いつしかコズエと2人で来るようになった。
石垣をほじくって石粒を思い切りまいた。
コズエもまいた。
幾度も幾度もまいた。
とても楽しそうだった。
コズエには、秘密があった。
人間や地球上のあらゆるものには、寿命があって、
やがて、朽ち果てていく。
広い宇宙からのメッセージ。
ぼくは信じる。
ぼくたちは、信じ続ける。
目の前に起きたすべての事を。
その意味を。
和僑 楡周平 [作家な行]
「プラチナタウン」の続編。
豊かな巨大定住型老人施設「プラチナタウン」
財政破たんから立ち直り、成功を収めた緑原町だったが、
今後は、人口減少、後継者不足等、
プラチナタウンの未来は、刻々と変化していくだろう。
商社マンだった山崎町長は、次なる策を考えていた。
日本人の繊細な技術、食文化、伝統、
これらを広く外国へ浸透させていくことで、
地方経済の再生を図る、
まさに和僑である。
しかし、全ての人が山崎に賛成なわけではない。
保守的な考えで、昔の考えを貫こうとするものに、
町長の座を譲ってはならない。
またしても、山崎の妙案が光る。
我が心の底の光 貫井徳郎 [作家な行]
母親の育児放棄によって死の淵を見た幼少期。
唯一の光だった子猫。
従弟の慎司にもらったこの子猫も、
飢餓により、徐々に衰弱し動かなくなった。
自分自身もやがて動けなくなった。
生き延びた先に待っていた人生は、
とても幸せとは言えなかった。
心の奥底に絶やさずに燃え続ける炎を糧に、
自分は生き続けていた。
大人になり、身を寄せていたラーメン屋の従弟の家を出て、
悪の道に進む。
不動産詐欺、ある女性を破滅へ追い込み、
そして、母を奪った男への復讐。
自分を支えていたのは、それだけだった。
新釈にっぽん昔話 乃南アサ [作家な行]
「さるとかに」、「花咲かじじい」、「一寸法師」
「三枚のお札」、「笠地蔵」、「犬と猫とうろこ玉」
日本に伝わる昔話。
こどもの頃から親しんできた有名どころが、
乃南氏によって、描かれた新釈むかしばなし。
基本の路線は守りつつ、
少し尾ひれのついた楽しいお話。
情景が頭に浮かぶように、
すーっと何気に入り込んでくる独特な世界観です。
肩の力を抜いて読めるそんな一冊です。