小箱 小川洋子 [作家あ行]
静かな空気感
私は、賑やかだった子供たちの残像と共に
この幼稚園に住む
「一人一人の音楽会」
愛する子どもの遺髪や骨で作られたイヤリングから
奏でられる微かな音
町はずれの丘の広場に吹く西風が
心地よく音を鳴らす
従姉のあの子も、足指の骨が竪琴となり
その存在を知らせる
居なくなった子どもたち
幼稚園に置かれたガラス箱の中で
成長し続ける
家族の思い
歌うことでしか会話ができないバリトンさん
私は、入院している彼の恋人からの手紙を解読し、
朗読する。
何があろうとも、思いを繋ぎ続ける
そして、この幼稚園を
見守り続ける
片田舎の長閑な地
子どもが消えた後の大人たちの悲痛な嘆き
それぞれの表現方法で、死者を悼む
心の境地
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