青空と逃げる 辻村深月 [作家た行]
いつまで逃げ続ければいいのだろう
息子と二人で、逃げ続ける日々は、
いつも不安と隣り合わせだった
芸能事務所の怖い連中が追ってくる。
夫の居場所は、知らない
目的は事故を起こした女優の車に同乗していた夫。
その後、その女優は自殺した。
事情も呑み込めないまま、
執拗な取材をするマスコミたちから逃げた
東京から逃げた。
息子の存在だけが、生きる希望だった
どんなことがあっても、
この子を守らなければ・・
移り住む町
定住することは、出来ない
それでも、生きるために前を向く
夫が仙台に居る・・
話を聞きたい
一縷の望みを胸に、
たどり着く地で、
2人に課せられた試練とは・・
夫の真実
息子の気持ち
やっと、辿り着く地には、
青空がどこまでも続いていた
母がしんどい 田房永子 [作家た行]
毒母に育てられた娘の話。
テレビで毒母の特集があり、この本に出会い、
「私だけじゃないんだ」と励まされたというのを見て、
ぜひ読んでみたいと思いました。
「あなたの為を思って言っているのよ」
自分の思うとおりにならないと、
突如、豹変する母。
怒鳴り散らし、罵倒し、私を傷つける。
いつしか、母の顔色を見て行動するようになった。
いい子でいることが、自分を守る事だと思った。
「私の言うとおりにしていればいいのよ」
逃げたくても逃げられない。
早く大人になって、家を出たかった。
支配され続け、自我も自信もなく、ただ苦しかった。
自立して、家を出た。
しかし、毎日のように鳴り響く電話。
味方だと思っていた父からの
恩着せがましい母と同類の内容の手紙。
住所と電話番号を変え、
親には知らせなかった。
そんな私も結婚をし、良い旦那様にも恵まれた。
子どもができた。
自信がなかった。
私も、あんな親になるのか、
私は、どうしたらよいのか。
神経内科の先生に、言われた。
「ひとりで頑張ったね。えらかったね。
あなたは、一つも悪くない」
「親に、会わなくていいんです」
・・・
親に近況を知らせた。
自分の中が怒りの感情でいっぱいになったとき、
爆発させる前に、自分の心を見る。
「怒っているな」
ん。待てよ。そんな怒る事じゃないよな。
・・・
母には、その声がなかったのかもしれない。
噛みあわない会話と、ある過去について 辻村深月 [作家た行]
4つの短篇です。
中の1作「ママ・はは」は、
「宮辻薬東宮」
に載っています。
現在と過去。
自分と他人。
それぞれ歩んできた道、
良くも悪くも年を重ねていく中で、
徐々に変わっていく。
昔の男友達の結婚。
嫁の査定は、余計なお世話。
昔の教え子の兄が、今や人気絶頂アイドル。
パッとしない子だったと、
周囲に過去を触れまわる教師。
食い違う両者の言い分。
余計なお世話・・。
地味で嫌われ者だった彼女が、
今や、カリスマ学習塾経営者。
小学校時代、友達に囲まれ人気者だった自分が、
雑誌の記事の為に、取材に行く。
複雑な心境の中で、ずっと自分が優位だと思っていた。
その思いが、無残にも打ちのめされたのは、
取材が終わった後だった。
それぞれの思い出の濃さは、良いと悪いとでは、
お互いにおける記憶の割合は、真逆だ。
仕打ちを受けた方は、鮮明に覚えている。
そのエネルギーは、計り知れない。
無暗に、他人の事を触れまわると、
大きなしっぺ返しが来る。
他人は他人。
余計なお世話なのである。
かがみの孤城 辻村深月 [作家た行]
2018年本屋大賞受賞作品。
ファンタジーでありながら、ズシリと重い。
それでいて、壮大な物語。
不登校児の内なる孤独と、
世の中の理不尽さ。
学校に行きたくても行けない辛さ。
同じ思いの子たちは、たくさんいる
分かってくれる人が絶対いる
「闘わなくていいんだよ」
信じてもいい人かもしれない。
突如、現れたかがみの中の城。
集められた7人は、
いずれも心に闇を抱えていた。
日中に開かれるかがみの通路。
個室もあり、自由に過ごしてよいが、
午後5時を過ぎると、
城の番人であるオオカミに食われるという。
この城は、3月30日まで。
それまでに、「願いの部屋」の鍵を見つけなければならない。
「鍵を見つけた者の、願いを叶えよう。」
いじめを受けて、不登校になったこころ。
城で出会った子たちと、
徐々に慣れ親しんでいく。
外の世界でも会いたいと思うようになるが・・・。
会いたくても、会えない。
なぜなのか。
この先、こころたちは、どう変化していくのか。
クローバーナイト 辻村深月 [作家た行]
現代の子育て世代に贈るエール。
保育園事情、過熱するお受験事情。
育児にまつわる昔と現代の考え方の差、
一筋縄ではいかない子育ての歯がゆさを描く。
家族の一人ひとりが、クローバーの一枚の葉。
全てが繋がり、ナイトが守っていく。
家族の絆は、何よりの心の支え。
鶴峯家のパパ・裕と、ママ・志保が、
自ら2人の子育てをしながら、
色々な人の様々な形の育児の悩みを目の当りにする。
志保本人の母からのプレッシャーは、
長年の胸のつかえだった。
愛情と言う名に隠れた、母の自己陶酔の押しつけに、
志保の心の容量が溢れかけた瞬間、
夫・裕の機転が志保を救う。