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テスカトリポカ 佐藤究 [作家さ行]


テスカトリポカ

テスカトリポカ

  • 作者: 佐藤 究
  • 出版社/メーカー: KADOKAWA
  • 発売日: 2021/02/19
  • メディア: ハードカバー



第165回直木賞受賞作。

圧倒的なスケールの大きさと、
読み応えのある世界史上の啓蒙的な教え、
そして、残虐的な描写が交錯し、
恐ろしい世界へ誘う。
驚きの作品。


闇の世界に生きる猛者たちの
卑劣で残酷な社会の中で、
犯罪に巻き込まれていく一人の若者の
行く末は・・・



今のメキシコの地にかつて栄えた
アステカ王国。

様々な神が存在し、
人間をゆさぶる謎めいた力を持つ。

最も偉大な神、
テスカトリポカ・煙を吐く鏡
夜と風とも呼ばれ、
時を超越する。

暗闇からの解放。

黒曜石の鏡の元に、
いけにえとして捧げられる心臓。
儀式と祭典は行われた。


闇に蔓延る犯罪人たち。
麻薬密売、臓器売買。

麻薬密売人と臓器ブローカー、
凄腕の殺し屋たちは手を組み、
心臓売買を始める。


一つの裏切りから腐敗が広がり、
全てが壊れていく。

光の中に、神の化身を感じた時、
恐れと恍惚が交錯し、
・・終結する。







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強運の持ち主 瀬尾 まいこ [作家さ行]


強運の持ち主

強運の持ち主

  • 作者: 瀬尾 まいこ
  • 出版社/メーカー: 文藝春秋
  • 発売日: 2006/05/12
  • メディア: 単行本



今年映画化された「そして、バトンは渡された」の
作者である瀬尾さんが描く2006年の作品。

元OLの占い師ルイーズ吉田は、
自らの直感から導き出される事に重きを置き、
迷える人々へ助言をすることで、
そっと彼らの背中を押す。

占いの結果が悪くても
悩みを出来るだけ軽く、
少しでも希望が持てるように。

公務員である夫と2人暮らし。
一人で気楽に占いを営んでいた。


占いには、少年や女子高生など
様々な人が訪れる。

言葉と表情の奥にある本当の悩み。

何度も対応することで、
読み解かれる要点。

占いとは違う観点からの助言は、
信頼が基本となり、
自然な心の繋がりを築ける
ルイーズ吉田の持ち味だ。

ある日、
「おしまい」が分かるという青年が現れて、
しばらく居座るようになった。

何かしらのおしまい。
予言めいた衝撃的な言葉。

青年は、ルイーズに告げる。
今年の終わりに、おしまいが見えると。

何かが終わる・・

決して、悪い事とは限らないし、
良い方に変わるのかもしれないし。。

動揺しつつも、迎えた年末。

気付かされた大切な存在・・



占いは、前に進むために時には頼っても良い。

でも、結局、自分を信じて、
直感を信じていく方が、
納得がいく結果となるのだと思う。














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家族じまい 桜木紫乃 [作家さ行]


家族じまい

家族じまい

  • 作者: 桜木 紫乃
  • 出版社/メーカー: 集英社
  • 発売日: 2020/06/05
  • メディア: 単行本



第15回中央公論文芸賞受賞作です。
心にずっしりと余韻を残す作品です。

釧路出身で江別在住の桜木さん。
この作品の舞台も同じであり、
少なからず影響しているかのように
真に迫ってくる登場人物の心情が生々しく
情景の濃厚さが伝わります。


母が認知症になってしまった。
厳格で昔気質な父が、
釧路の実家でひとり面倒を見ている。

長女は江別、次女は函館にそれぞれ家庭を持っていた。

家族が歩んできた複雑な道。

美容師として家を継ぐはずだった長女の夢は、
託されたはずの父から奪われ、確執だけが残った。

妹が、実家の事を気にかけ、
2人との二世帯住宅を実現させる。
次女なりの心の溝を埋めるごとく、
順調に行くはずだった。

疲れ切った父の心情は計り知れない・・。

それぞれの見えるものが、
積み重ねてきた月日の陰で歪み、
違っていた。


長女の夫と義弟。
そしてその嫁の苦悩。
年老いた義父母。

母の姉の複雑な心情。
そしてその姉を捨てた娘たち。

様々な悩みに囲まれ、もがき苦しむ。

辛いのは、自分だけではない。

見えないところで、皆闘っている。


家族の絆。

有無も強弱も千差万別。

折り合いをつけるのも、
時の流れ・・










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元彼の遺言状 新川帆立 [作家さ行]


元彼の遺言状

元彼の遺言状

  • 作者: 新川帆立
  • 出版社/メーカー: 宝島社
  • 発売日: 2021/01/08
  • メディア: Kindle版



2021年第19回「このミステリーがすごい!」大賞受賞作。

おカネが大好き!
向かうところに敵なし!
キャラが際立つ敏腕弁護士の麗子。

何人にも歯に衣着せない物言いで、
我が道を猛進する麗子。
上司にも思ったことをズバズバ言い、
腹を立てて事務所を飛び出した。

そんな矢先、元彼が亡くなっていた事を知る。

元彼・栄治は大手製薬会社の御曹司で
相続を巡って大騒動になっていた。

彼の遺言状には、こう書かれていた。

「僕の全財産は、僕を殺した犯人に譲る」

体が衰弱していた栄治はインフルエンザで死亡したという・・
「うつしたのは僕かも。」
ひょんなことからそんな栄治の友人の代理人として
「犯人選考会」なるものに参加することになった麗子。

遺産を勝ち取るために、奔走する。

様々な関係者と出会い、
調べていくうちに、事実とは異なる秘密が・・

これは・・病死ではない⁈



麗子の心の声が徐々に変化していくのが、
とても面白いです。
お茶目なところが見え隠れしていて、
憎めない。
実は真の心は優しいのです。

麗子さんシリーズ熱望!









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そして、バトンは渡された 瀬尾まいこ [作家さ行]


【2019年本屋大賞 大賞】そして、バトンは渡された

【2019年本屋大賞 大賞】そして、バトンは渡された

  • 作者: 瀬尾まいこ
  • 出版社/メーカー: 文藝春秋
  • 発売日: 2018/02/22
  • メディア: 単行本(ソフトカバー)



2019年本屋大賞作品です。


色々な親子の形があってよい。

その時々を受け入れ、強く前向きに生きる優子。

特異な家庭環境にもかかわらず、明るく生きる。

学校で起きる辛い事も、客観的に考え、
逆境を跳ね返すとても芯のある心は、
小さい時から、知らず知らずに身についた処世術なのか。
生まれ持った気質なのか。

母2人、父3人。
血は繋がっていなくても、立派な親子。
生みの母は、亡くなっていて悲しいけど、
一緒にいた父や母、みんな一生懸命に、
大切に育ててくれた。

やがて、社会人となり、
結婚を考えるようになり、
新たな環境に向かう。

晴れ姿、離れ離れになった父や母にも見てもらいたい。

皆が満面の笑みで祝福してくれる姿を見て、
幸せを改めて感じる。



親と子の関係について、とても感慨深い小説。
前向きで、自分は自分、強い意志を持ち生きる。
全てを受け入れざるを得ない環境に立った時、
人は一回り大きく強くなれるのかもしれない。





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