海馬の尻尾 荻原浩 [作家あ行]
面白かったです。
場面が鮮やかに浮かんできて、
物語に引き込まれていきます。
恐怖や共感、
人として大切な部分が俺には欠落していた。
ヤクザな稼業を天職だと思っていた。
他人を殺めても、何も感じない。
昔、義父に折檻され続けたせいか、
それとも・・・。
頭に血が上って、殺ってしまった。
相手は、他の組の組長だった。
オヤジに止められていたにも関わらず、
本能の赴くままに。
人を人と思えない。
「反社会性パーソナリティ障害」
海馬の先の扁桃体の欠如。
陥れるために悪知恵は働く。
知能は並より良いらしい。
「アルコール中毒を治せ」
同時にアル中でもあった俺。
オヤジに勧められた医者・桐嶋の治療は、
山中にある隔離施設で行われた。
目を付けられていたので、
身を隠すのにちょうどいいと思った。
病院で出会った少女・梨帆。
誰も寄り付かない俺に、妙に懐く。
梨帆も、恐怖を知らない病気らしい。
疲れた横顔の母親と共に、何故か気になっていた。
隔離施設に、梨帆もいた。
一緒に、外で体操する時が、楽しみだった。
初めての感情だ。
そこには、様々な症状の患者がいた。
月日が経ち、治療が進むにつれ、
異常な行動を起こすものが多くなってきた。
過酷な治療がそうさせるのか?
明らかに悪くなっている。
おかしい
その頃、梨帆が具合が悪いと体操に出てこなくなった。
様子を見ようと、小児のE棟に忍び込む。
変わり果てた梨帆を見た。
これは、ただ事じぇねえ。
ここは、とんでもないところだ。
逃げなければ、殺されちまう。
俺は、梨帆を連れて逃げることを決めた。
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