スウィート・ヒアアフター よしもとばなな [作家やらわ行]
スウィート・ヒアアフターとは、甘い来世。
事故が起きた。
お腹に棒が刺さった状態。
死を覚悟した瞬間に見た、柔らかな光に包まれた世界。
大好きだったおじいちゃん、
かわいがっていた犬がそばにいる。
痛みはない。
気分がいい。
ああ、大好きな洋一は、
大丈夫なのかな。
彼の命が助かりますように・・。
痛みとともに、目が覚めた。
鉛の様な体は、
現実を物語っていた。
洋一は、即死だった。
奇跡的に助かった命。
少しずつ傷は癒えていくが、
心にぽっかり空いた穴は
いつまでも塞がらなかった。
まぶい(魂)を置き去りにしてしまった。
抜け殻の体は、生きている。
夢か現実か、
事故後、私は死んだ人が見える。
死んだ人がたくさんいるアパートで、
過ごしていると、
じんわり幸せを感じるまでになってしまった。
たくさんの亡くなった魂が、
少しでも良き時間が過ごせますように。
祈るようにもなった。
彼との思い出の上に、
新しい思い出を重ねる。
少し、気持ちが軽くなったかもしれない。
事故の場所に行った。
私は、まぶいを取り戻す。
彼との思い出を胸に抱きながら、
少しずつ、少しずつ、
前に進んでいく。
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