悪の芽 貫井徳郎 [作家な行]
人間は、動物から進化を遂げ、社会を作った。
そしていつしか、
強者と、弱者の差が生まれ、
極端な格差社会となった。
傲慢さ、蔑み、妬み、憤り・・
様々な感情が、蔓延る現代、
匿名という保護の元、
簡単に晒される言葉は、
時には、人を残酷なまでに打ちのめす。
最大級のアニコン会場で、
男が火炎瓶を投げ込み、
大量の死傷者を出した。
男は、その後焼身自殺をした。
事件を起こした男・斉木は、
安達の小学校時代の同級生だった。
斉木は苛められていた。
その原因を作ったのが、安達だった。
就職氷河期に晴れて銀行員になった安達と、
アルバイト生活をしていた斉木。
事件の発端は、小学時代のいじめとの報道で、
安達は、そのことを確かめようと、
斉木について調べ始める。
自責の念から解放されたい思いから
斉木を理解しようと試みるが、
自らの傲慢さを思い知り、苦しむ事に。
斉木は、安達が思うより、
人間らしい心を持っていた。
人類は、まだ進化途上であり、
全ての人間が成長するにはまだ時間がかかる。
斉木は、
今の世界に絶望し、
人間に絶望し、
自分自身に絶望したのだ。
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