コイコワレ 乾ルカ [作家あ行]
文章から伝わってくる情景が、
しっかりと頭の中に広がり、
物語に引き込まれていきます。
「山」と「海」
決して交わることのない運命
互いに憎しみあい、対立しあい、
近づくことはなかった
太平洋戦争末期、
東京の親元を離れ、疎開先の寺に来た清子。
母からの木彫りのお守りを胸に、
孤独に耐えていた。
清子は、他の子とは違う蒼の眼を持ち、
異彩を放っていた。
「海」としての特徴だった。
突如、清子は体全体に衝撃的な嫌悪感を覚える。
それが、「山」としてのリツとの出会いだった。
リツは、疎開先の寺で育った孤児だった。
リツもまた、清子に対して、
激しい嫌悪感を覚え、敵対していた。
ある日、1人の青年の出征を前に、
事件が起こる。
決して、近づくことはないと思っていた。
2人は、大切な人を思う心の本当の意味を知る。
相互作用により、人間性を大きく成長させていく。
思いが、運命を大きく変えていく。
心を込めて、魂を込めて、無事を祈り、
彫り上げる、特別なお守り。
役目を果たした時、砕け散る
私を守った2つのお守り。
決して忘れない。
そして、私たちは、これからも生きていく。
(「螺旋」プロジェクト 昭和前期篇)
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